
短い期間だったがラリーに関わる仕事をしていたことがある。
関わるといっても、ドライバーでもメカニックでもないので、
ラリーチームのメンバーとして世界を転戦するとかではなく、
スポンサー企業の広告宣伝部門の担当者として、チームの運営費用を
確保(予算化)するのが主な仕事だった。
当然のことながら仕事のほとんどはシーズンの開始前に集中していて、
シーズン中は特にやらなければならないことはなかった。
同じ広告宣伝部門の人間でも、実際の広告や宣伝に関わる担当者達は、
シーズンを通してチームと関わっていくので、徐々にフレンドリーな
感じが醸成され、最終的にはひとつのチームのようになる。
一方こちらは、チームのオフィス(ガレージ)に行くときは、
「この部分の費用は何のためになんでしょうか?」
「この費用はもう少し圧縮出来ないでしょうか?」
「こちらも最近は広告宣伝費小さくなってきてて...」
みたいなことしか言わないので、お互いに仕事とは言っても
なんとなく居心地のよくない雰囲気になってしまうことが多かった。
そんな中でも、チームの運営のために必要なことだと理解してくれる
メンバーもいて、比較的年齢の近いチーフ格のメカニックは少しずつ
他の話も出来るようになっていった。
車のメカニズムについて教えてくれたり、スポンサー企業に頼るだけ
ではないチームの運営はどうあるべきかとか、まあそんな話をする
ようになった。
一番心に残っているのは、「結局のところクルマはバランスなのだ」
という話だ。骨格の強さだけでも、出力だけでも、旋回性だけでも、
制動力だけでもダメだということを言っていたのだと思っている。
何年か経って、会社もスポンサーを降りることになり、チームも解散すること
になった時に、彼に身の振り方を聞きにいった。
答えは別のチームに行くということだった。既にその準備を始めていて
新しいチームとも接触しているということだった。
今度はどの車を扱うのかと聞いたところ、スズキのスイフトという車だという
ことだった。しかもヨーロッパに行くとのことだったので結構驚いた。

どんな車なのかと聞くと、とても良いし今後どんどん良くなるだとうとの
答えだった。
新しいスイフトスポーツが出て、その時の話のように良い車になっている。
もう乗ってみたかな?